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給与改定  (減給する時の注意点) 

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~社員の給与を下げる前に~

諸般の事情に伴って、止むを得ず社員の給与を引き下げる場合、どのような点に注意すべきでしょうか。給与は労働条件の中でも特に重要な項目であり、安易な引き下げは非常に危険です。過去の労働判例等を見ても分かるように、社員にとって不利となるような条件に変更する場合には、高度な必要性・合理性をはじめ、幾つものハードルが設けられているのです。

※社員の非行に対して、懲罰として行われる「減給」処分は除きます。(一時的・部分的であるため)

◇ A.役職の降格に伴う降給

(理由例) 職務遂行能力の不足/リーダーシップやコミュニケーション能力など管理職としての適格性の欠如

役職や職位を引き下げる降格は、労働契約の内容に当然に含まれるものとして、使用者に決定権が認められます。就業規則に根拠がなくとも、使用者による裁量で行う事ができ、その結果として降給や諸手当の減額が生じる事はやむを得ないことです。

なお、予め個々の社員から同意を取っておくと望ましいでしょう。

(注意!)人事権の濫用は無効となりますので、以下の点に留意しましょう。

① 非違行為や能力不足を理由に、その役職には不適格だと判断したことは、会社として本当に必要であり、相応しいものですか?

② 職務遂行能力や適性が欠如していることは、労働者の責めに帰すべきところがありましたか?帰責性があるならば、その程度と降給処分は相応しいものですか?

③ 給与の減額の程度や、労働者のキャリア・適正・名誉感情の配慮等を考慮していますか?

④ 過去、昇進や昇格について、御社ではどのように扱ってきましたか?※降格されたにも関わらず、職務内容が降格前と実質的に変わっていない場合、その降給処分は違法となる可能性が高いといえます。

◇ B.職能資格制度上の降給

職務を変えずに給与を引き下げる、つまり職能資格と結びついた給与(基本給、職能給)を引き下げる措置は、すなわち契約内容の変更を意味します。個々の労働者の同意を得た上で変更、かつ降給時の取扱が就業規則等に明確に記されていなければ、降格を命ずることは不可能です。就業規則等が整備されていない場合、その社員に対して十分に説明・協議して減給の承諾を得るなど、特に慎重に手続を行うことが必要です。

(注意!) 基本給や職能部分の降給は、特に慎重に行いましょう。

① 事前に労働組合又は従業員代表者と協議をし、合意を得る。

就業規則や給与規程において、その可能性や降格ルールの適用対象者および降格基準について規定すると同時に、社員へ十分な説明をしておきましょう。

② 降格ルールの構成・慎重な運営

「○年連続で最低の評価を取得すると、自動的に降格」

(見直し例) ↓

「○年連続で最低の評価を取得すると、降格の候補者となる。社内協議を経て、最終的に降格対象者を決定する。」

手順を見直すことで、恣意的な評価や評価者の一存での決定を防ぐことが可能です。あくまでも公正なルールと慎重な運営が望まれます。

③ 社員の能力開発、再昇格の仕組みを併設

  (注意!):就業規則が未整備の場合)

就業規則で根拠づけられない場合、簡易的であっても人事考課表を作成して導入することをお勧めします。評価の劣位、著しく劣ることを後で立証できるようにしておくことが肝心です。その他、評価の観点を共有する、複数の目で評価するなど客観的に評価が行えるような“書面と手続きを整備“しておきましょう。もちろん、会社・上司から毎年の評価結果を本人に通知し、指導し、奮起を促すプロセスを経ることが最も重要であることは言うまでもありません。

◇ C.会社経営事情による給与カット

まずは就業規則には経営危機下に給与カットができる事を定めているかを確認します。さらに下記の点に留意します。

① 会社経営上、給与カットを行う事が不可避でしょうか?

② 諸々の観点から、社員のデメリットはどの程度でしょうか?また、実施する代わりに有益な措置を講じ、あるいは手順に段階を踏むことで、衝撃を和らげていますか?

③ 世間一般の事例と比較し、相応しい処置でしょうか?

④ 社内労働組合又は従業員代表者の合意はありますか?

特に④には留意すべきです。合意ができていない場合、1円でも減給すると違法となります。合意を得るためには、会社の現況、実施の有無ごとに想定される事態、実施期間等を説明し、給与カットの方法も具体的に明言する必要があるでしょう。会社の経営姿勢や業績回復に向けてのシナリオを提示することも大切です。

参考:共通の理解として

  1. 労働者が被る不利益の程度
  2. 使用者の変更の必要性、内容・程度
  3. 変更後の就業規則の内容自体の相当性
  4. 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況
  5. 労働組合等との交渉の経緯
  6. 他の労働組合又は他の従業員の対応
  7. 同種事項に関する我が国社会における一般的状況

2014年8月30日 | カテゴリー:労務管理

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