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社員のメンタルヘルス対策

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◇職場復帰の手順

職業生活における人間関係や長時間労働等、強い不安やストレスを感じている労働者は約60%に上っています。また、メンタルヘルス上の理由により連続1ヶ月以上休業し、又は退職した労働者がいる事業場は7.6%となっています。こうした心の健康問題により休業する労働者への対応は、多くの事業場にとって大きな課題となっています。

メンタルヘルス不調者への対応としては、休職を発令し傷病手当金を受給しながら休職させるケースが一般的ですが、休職期間を満了しても治癒せず、退職となるケースも少なくありません。厳しい経済情勢の中、労働者を1人でも休業させることは、コストや他の労働者にかかる負担を考えると経営を圧迫させることにもつながるため、その方を退職させて新たな人材を採用したいというお気持ちにもなるでしょう。しかしながら、不用意に退職や解雇にしてしまうと労使紛争等のトラブルや、他の労働者に対しても「明日は我が身」と思われモチベーション低下の影響がでることにもなりかねません。退職や解雇については、あくまでも最後の手段として考えるのが良いでしょう。

それでは、休業開始から職場復帰まではどのような手順が必要なのでしょうか。職場復帰の流れは、休業開始から職場復帰後のフォローアップまでの次の5つのステップからなっています。

 <第1ステップ>

病気休業開始及び休業中のケア

メンタルヘルス不調者は、病院を受診することや、休職を勧めても拒否することがあります。その場合には、会社が必要に応じて検診や診断書の提出を命令できるように、あらかじめ就業規則に規定することが重要です。受診後、休職が必要な場合は、労働者から会社又は人事労務担当者に主治医による診断書を提出してもらいます。

休業する労働者に対しては、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順を説明します。労働者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、特に次のような項目については理解の相違がないように、面談を行います。

・傷病手当金などの経済的な保障

・社会保険等の支払方法 

・休業の最長期間

・定期連絡の方法 など

 

<第2ステップ>

主治医による職場復帰可能の判断

休業中の労働者から会社に対し、職場復帰の意思が伝えられると、会社は労働者に対して主治医による職場復帰可能の判断が記された診断書の提出を求めます。診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうようにします。

主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力までの判断とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断することが重要です。なお、あらかじめ主治医に対して職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報を提供し、労働者の状態が就業可能な回復レベルに達していることを主治医の意見として提出してもらうようにすると良いでしょう。

 

<第3ステップ>

職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成

安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰ができるか否かを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的プラン(職場復帰支援プラン)を作成します。この具体的プランの作成にあたっては、人事労務担当者等を中心に、会社、休職中の労働者の間でよく連携しながら進めます。

~情報の収集と評価~

職場復帰の可否については、必要な情報を収集し、さまざまな視点から評価を行い総合的に判断することが大切です。情報の収集と評価の内容は次のとおりです。

ア)労働者の職場復帰に対する意思の確認

(イ)産業医等による主治医からの意見収集

診断書の内容だけでは不十分な場合、産業医等は労働者の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を収集します。

(ウ)労働者の状態等の評価

治療状況及び病状の回復状況、業務遂行能力、今後の就業に関する労働者の考え、家族からの情報

(エ)職場環境等の評価

業務及び職場との適合性、作業管理や作業環境管理に関する評価、職場側による支援準備状況

(オ)その他

治療に関する問題点、本人の行動特性、家族の支援状況や、職場復帰の阻害要因等

 

~職場復帰の可否についての判断~

職場復帰が可能か、人事労務担当者等が中心となって判断を行います。

 

~職場復帰支援プランの作成~

以下の項目について検討し、職場復帰支援プランを作成します。

(ア)職場復帰日

(イ)管理監督者による就業上の配慮

業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の配慮、治療上必要な配慮など

(ウ)人事労務管理上の対応等

配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性

(エ)産業医等による医学的見地からみた意見

安全配慮義務に関する助言、職場復帰支援に関する意見

(オ)フォローアップ

管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し

(カ)その他

労働者が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用

 

<第4ステップ>

最終的な職場復帰の決定

第3ステップを踏まえて、会社による最終的な職場復帰の決定を行います。

(ア)労働者の状態の最終確認

疾患の再燃・再発の有無等について最終的な確認を行います。

(イ)就業上の配慮等に関する意見書の作成

産業医等は「職場復帰に関する意見書」等を作成します。

(ウ)会社による最終的な職場復帰の決定

会社は最終的な職場復帰の決定を行い、就業上の配慮の内容についても併せて労働者に対して通知します。

(エ)その他

職場復帰についての会社の対応や就業上の配慮の内容等が労働者を通じて主治医に的確に伝わるようにします。

 

<第5ステップ>

職場復帰後のフォローアップ

職場復帰後は、会社や人事労務担当者、管理監督者による観察と支援のほか、フォローアップを実施し、適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。

(ア)疾患の再燃・再発、新たな問題発生等の有無の確認

疾患の再燃・再発についての、早期の気づきと迅速な対応が不可欠です。

(イ)勤務状況及び業務遂行能力の評価

労働者の意見だけでなく、管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行います。

(ウ)職場復帰支援プランの実施状況の確認

職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認します。

(エ)治療状況の確認

通院状況、病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞きます。

(オ)職場復帰支援プランの評価と見直し

さまざまな視点から評価を行い、問題が生じている場合は、関係者間で連携しながら、職場復帰支援プランの内容の変更を検討します。

(カ)職場環境等の改善等

職場復帰する労働者がよりストレスを感じることの少ない職場づくりをめざして、作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境等の評価と改善を検討します。

(キ)管理監督者、同僚等の配慮

職場復帰をする労働者を受け入れる職場の管理監督者や同僚等に、過度の負担がかかることのないよう配慮します。

 

2014年9月2日 | カテゴリー:労務管理

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