「労働契約申込みみなし制度」の施行について
派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、その違法状態が発生した時点で、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなす「労働契約申込みみなし制度」が、この10月1日から施行されます。これにより、派遣労働者が申込みを希望して承諾した場合は、派遣先はその承諾を断ることができません。
同制度の施行が近づいたこともあり、7月10日に厚生労働省から通達が出ましたので、制度の趣旨および全体像を踏まえながら行政解釈について簡単にご紹介いたします。
◇制度の趣旨
違法派遣の是正に当たっては、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定が図られるようにすることと、違法派遣について責任がある派遣先企業に対して一定のペナルティを科すことにより、法規制の実効性を確保することが必要になります。これらを充足すべく本制度が創設されました。
◇行政解釈について
①申込みを行ったとみなされる時点
・違法行為を行った時点において、労働契約の申込みをしたとみなされます。
・派遣先企業がこの制度の適用を受けないためには、違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れているものでないこと(善意無過失)を自ら立証しなければなりません。
・平成27年10月1日時点で違法行為が行われている場合には、派遣先等は、その時点において労働契約の申込みをしたものとみなされます。
②申込んだとみなされる労働条件の内容
・違法行為の時点における派遣元事業主等と派遣労働者との間の労働契約上の労働条件と同一の労働条件になります(労働契約上の労働条件でない事項については維持されるものではありません)。
・労働契約の期間に関する事項は、みなし制度により申し込んだとみなされる労働契約に含まれる内容がそのまま適用されます。なお、労働契約法で定められている「有期労働契約期間が通算して5年を超えて反復更新された場合、その労働者の申込みによって無期労働契約へと転換する」との関係ですが、この条文は同一の使用者との間のものであるため、承諾時点までの労働契約期間と承諾後の労働契約期間は通算されません。
③労働契約成立の時点
・労働契約が成立するのは、みなし制度に基づく申込みについて派遣労働者が承諾の意思表示をした時点となります。
・派遣労働者が承諾できる申込みは、最新の申込みに限られません。
・違法行為の前にあらかじめ派遣労働者が「承諾をしない」ことを約する意思表示を行うことは認められません。
派遣先企業へのペナルティの側面が色濃く出た制度ですが、一方、派遣社員を派遣先で直接雇用することにより受給できる助成金もあります。まずは、労働者派遣法に違反する点がないか点検しつつ、労働人口が減少していく中での人材戦略の一環として派遣労働者の待遇改善などを検討してみるのも良いでしょう。
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2015年9月6日 | カテゴリー:ニュース