債権の取り立てと給与の差押え
◇従業員がサラ金業者に借金!!どうする?
従業員が、あるサラ金業者に多額の借金をしたまま夜逃げをしてしまい、そのため、そのサラ金業者が会社にやって来て、未払給与や退職金を借金返済に充てるので支払ってくれといわれて困ったという相談を、ごく希にですがいただきます。この場合の対応について、お話ししたいと思います。ご参考にしてみてください。
◇賃金は必ず労働者本人に直接手渡さなければなりません
サラ金業者も大手の場合は、裁判所を通して法的手続きをとりますが、そうではない業者の中には直接会社へやってくるケースがあるようです。しかし、賃金は必ず労働者本人に直接手渡さなければなりません。これは、賃金のピンハネなどを防ぐために設けられた、労働基準法第24条による「強行規定」です。ですから、例えばサラ金業者が本人から委任状を預かっていても、債権譲渡(賃金請求権を譲り受けた)の証書をもっていようとも、これに応じる必要はありません。逆に違反した賃金の支払いは無効となり、罰則(30万円以下の罰金)の適用もあります。ここでいう賃金とは、「名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」を指し、給与のほか各種手当や賞与、そして退職金も含まれます。
会社としては断固業者の要求を拒否すべきところですが、もし業者がしつこく押しかけてきて迷惑をかけるようなら、近くの警察に連絡し警察官を派遣してもらい、刑法によるところの業務妨害や不退去罪として取り締まってもらうことです。また、同時にそのサラ金業者の監督官庁に連絡し(複数の都道府県で営業する者は財務局、一つの都道府県内で営業する者は当該県庁の金融課など)、貸金業規制法第21条「業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない」に違反するとして、会社へ取り立てに来ないように行政指導をしてもらうこともできます。
◇裁判所を通じ「給与の差押え」となった場合には?
しかし、サラ金業者が正規の法的手続きをとり、裁判所を通して「給与の差押え」をした場合には、差し押さえられた範囲で未払給与や退職金を支払わねばなりません。月給制ならば、基本給及び諸手当(通勤手当は除く)から所得税・住民税・社会保険料等を控除した残額の4分の1(ただし、残額が28万円を超えるときは残額から21万円を引いた額)を、退職金については、同じく所得税・住民税等を控除した残額の4分の1が差し押さえられることになります(民事執行法第152条及び施行令第2条)。残りは必要生計費として差押えが禁止されています。もし、差し押さえている債権者(サラ金など)が複数いる場合には、供託することになります(民事執行法第156条2項)。
上記を参考にしていただき、このような事態になった場合でも、慌てずに適切な対応をとることが必要です。
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2014年11月23日 | カテゴリー:その他