振替休日」の要件と運用上の注意点について
業務の繁忙期など、労働者に休日労働してもらう場合に、「振替休日」を与えることもあるかと思いますが、これを良く似た「代休」と混同していると、後でトラブルの原因になるかもしれません。
「振替休日」とは、予め休日と定められていた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすることを言います。これにより、予め休日と定められた日が「労働日」となり、その代わりとして振り替えられた日が「休日」となります。従って、もともとの休日に労働させた日については「休日労働」とはならず、休日労働に対する割増賃金の支払義務も発生しません。
一方、「代休」とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものです。「振替休日」と違って、前もって休日を振り替えたことにはならないため、休日労働分の割増賃金を支払う必要があります。
当然、「代休」で運用するよりも「振替休日」の運用を心掛ける方が、会社としては得策と考えるでしょうが、「割増賃金が発生しない」なりの要件を求められた運用を行う必要があり、その要件を満たしていなければ、「代休」扱いとなり、割増賃金分が未払い賃金となってしまう恐れがあります。
そこで有効に「振替休日」と見なされるための3つの要件についてご案内いたします。
◇振替休日を行う上での3つの要件
1.就業規則で、休日の振り替えを命じることがある旨の記載をする必要があります。
業務命令として、会社が発令できるようにするための根拠になります。
規程例
「業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ休日を他の出勤日と振り替えることがある。」
2.振替休日は事前に振り替える必要があります。
休日出勤をさせる場合は、休日出勤する日の前日の終業時間前までに、上司が命じるなり、従業員に届出させるなりして、事前に「いつの休み」を「どこの出勤日」と入れ替えるのかを指定して命令又は届出をさせましょう。これは、監督署の調査等が入った時には事前に振り替えを指定していることの証拠資料となります。
届出の際のポイント
常に記載要求事項を満たした届出をさせるためには、社内書式として「休日出勤申請書」などを作っておくと良いでしょう。
その際、記載事項は次の3つの日付が重要になります。
・届出日 :6月19日(金)
~一番初めの日付が来ます(事前申請)
・出勤する休日:6月20日(土)
~届出日よりも後の日付
・振り替える日:6月25日(木)
~必ず具体的に決める
3.振替休日は、法定休日の1週1日の確保、もしくは4週4日の法定休日を確保する必要があります。もちろん、36協定届も適正に監督署へ提出しておきましょう。
就業規則で「法定休日は日曜日とする」と限定的な表現をしていないでしょうか。4週4日の法定休日を運用する場合は、就業規則に4週の起算日を定めているでしょうか。会社として柔軟に対応できる表現にしましょう。
規程例
「会社は、法定休日を原則として毎週1日(起算日は日曜日とする)確保するものとする。ただし、業務の都合により4週(起算日は4月1日とする)を通して4日間の法定休日を確保することもある。」
なお、振り替える出勤日については、振り替えられた休日以降できるだけ近接している日が望ましいとされています。また、振替休日が翌週以降になってしまった場合、週の法定労働時間(40時間)を超えて労働させた時間については時間外労働に係る割増賃金の支払いが生じますので注意が必要です。
近年、勤務時間限定正社員や朝方残業などワークライフバランスを重視した働き方がクローズアップされてきています。事業運営上、休日に労働日を設けることはやむを得ない部分もあるでしょうが、計画的に労働力を調整して、出来る限り休日は休日として取得できるように心がけていくと良いでしょう。
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2015年6月28日 | カテゴリー:労務管理